アスベストが原因で発症するとされる疾病
アスベストの繊維は非常に細かいため空気中に飛散しやすく、その粉じんを吸い込むことにより肺の組織内に沈着し、長期間滞留することによってさまざまな疾病を引き起こすとされています。アスベストとの関連性がある疾病としては下記があげられます。
①石綿肺② 肺がん(原発性肺がん)③ 悪性中皮腫④ びまん性胸膜肥厚⑤ 良性石綿胸水
① 石綿肺
関連性があると考えられている代表的なものの一つ。粉じんの吸入により肺が線維化(せんいか)する「じん肺」という疾病のひとつです。初期症状としてはせき、たん、息切れなどがみられ、進行すると重度の息切れや呼吸不全を引き起こすといわれています。アスベストを長期間、大量に吸引ばく露することで発病するとされています。
② 肺がん(原発性肺がん)
肺がんのうち、肺および気管支の細胞から発生する悪性の腫瘍を原発性肺がんといいます。主に、せき、たん、血痰(けったん)、胸の痛み、息苦しさなどの症状がみられますが、進行するまではほとんど自覚症状がないこともあります。「転移性肺がん」とは治療方針が異なりますので、きちんと区別して対処する必要があります。
③ 悪性中皮腫
肺を包む膜(胸膜)や、おなかの内側(腹腔)を覆う腹膜などに並んでいる中皮細胞から発生する悪性腫瘍のことを、悪性中皮腫といいます。症状としては、せきや胸の痛み、呼吸困難、胸部圧迫感のほか、発熱や体重減少がみられることもあります。アスベストの吸引以外の原因で発症することもあるとされていますが、まれなケースと考えられます。
④ びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)とは、肺を包む胸膜きょうまくが線維化、厚くなっていく病気です。通常、肺は柔らかく、呼吸によって膨らみます。しかし、線維化が進行すると胸膜が厚くかつ硬くなり、肺が膨らまなくなってしまいます。その結果、呼吸が難しくなり、息切れなどの症状が現れます。例えば、歩いただけで息が切れるようになり、重症になると酸素吸入などの治療を必要とすることが多くなります。
⑤ 良性石綿胸水
肺の外側とあばら骨の内側などを包む胸膜の炎症により、胸水がたまる病気です。症状は特に現れないことが多く、ほとんどの場合は胸水も自然に消滅するといわれています。
ただし、胸水が消滅せず、呼吸器障害が残ることもあります。
以下の4項目を満たす疾患をいいます。
(1)石綿ばく露歴があること
(2)胸部レントゲン写真あるいは胸水穿刺で胸水の存在が確認されること
(3)石綿ばく露以外に胸水の原因がないこと
(4)胸水確認後3年以内に悪性腫瘍を認めないこと
潜伏期間について
アスベストを吸い込んだからといって、すぐに疾病を発症するわけではありません。アスベスト健康被害は、長い潜伏期間を経て発症するといわれています。
①石綿肺:15~20年
②肺がん:15~40年
③悪性中皮腫:20~50年
④びまん性胸膜肥厚:30~40年
⑤良性石綿胸水:40年程度
アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていますが、短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については 不明な点が多いとされています。現時点では、どれくらい以上のアスベストを吸えば、中皮腫になるかということは明らかではありません。もし不安がある場合は労災病院等の専門医療機関にご相談ください。